都市間ツアーバスは、2005年頃の利用者数が21万人から、規制緩和により2010年には約600万人に急増、しかし、低価格競争が過熱し、安全対策が軽視され、運転手は過酷な労働環境に追い込まれました。
この問題を受け、法改正により交替運転手の配置や運転時間の制限が義務化され、運転手の労働環境と運行の安全性が改善、連続運転時間の厳格な制限が導入され、運転手の労働環境改善と安全運行の確保が図られています。
バス運転手交替の配置とは
バス運転手交替とは、長距離や時間のかかるバスの運行において、運転手を交代して運行を継続することを言います。
運転時間が長時間に及ぶ場合、運転手に疲れがたまり、運転の安全性が損なわれる恐れがあるため、適切なタイミングで運転手を交代し、疲労を回復させることが必要です。
バス運転手交替では、交替地点で運転手を交代する方法と、中継地点で運転手を交替する方法があります。
交替地点では、前の運転手が運転を終えたバスを次の運転手が引き継いで、そのまま運行を継続します。一方、中継地点では、前の運転手が運転したバスは中継地点で別のバスに乗り換え、次の運転手が新しいバスを引き継いで運行を継続するという方法がとられることがあります。
バス運転手交替には、運行スケジュールやバスの種類、運転スキル、運転時間などを考慮し、適切な交替タイミングや方法を選択する必要があります。
適切なバス運転手交替によって、安全で円滑なバスの運行を維持することができます。
バス運転手居眠り事故
2012年4月29日に関越自動車道上り線、藤岡ジャンクション付近でツアーバスが防音壁に衝突、7人が死亡、39人が重軽傷を負った事故が発生。
みなさんご存知の方もいると思いますが、この「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」がキッカケでツアーバスが廃止になりました。
バス車両の構造見直し
更に事故を受けて、高速バス限定で車両の構造も見直されています。
- 「座席背面を衝撃吸収出来る構造にすること」を2012年7月に義務化。
- 「自動ブレーキ」を新型車は2014年11月から、断続生産車は2017年9月から、それぞれ義務化されています。
義務化されたのは、新車でかつ高速道路を走る車両に限定。義務化以前の車両はマイナーチェンジや改修で対応しています。
拘束時間・休日
バス運転手の拘束時間や休日については、労働時間法に基づいて定められています。
まず、拘束時間については、1日あたりの拘束時間が13時間を超えないようにすることが定められています。
ただし、特別な事情がある場合には、1日あたり16時間まで延長できます。また、1週間あたりの拘束時間が65時間を超えないようにすることも定められています。
バス運転手の運転時間や待機時間を管理し、労働時間の過重や過労による事故や健康被害の防止が図られます。
次に、休日については、休息時間+24時間の連続した時間が定められています。
バス運転手は、長時間の運転や不規則な勤務時間によって、身体的・精神的な負担がかかることがあります。
そのため、労働時間や休日の管理は重要な課題となっており、運転手の健康と安全を守るために、労働法に基づいた適切な取り組みが求められます。
- 1日の拘束時間は原則として13時間以内
- 延長する場合でも最大16時間が限度
- 休憩時間は断続8時間以上必要
- 1週間の拘束時間は原則として65時間以内(4週間の平均)
- 休日は「休息時間+24時間の連続した時間」
- 休息時間は連続8時間以上「休日は8時間+24時間=32時間以上の連続した時間が必要
参考:厚生労働省
交替運転者の配置基準一部改正
2013年8月1日、国土交通省により「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」が一部改正され、その中で「高速バス及び貸切バスの交替運転者の配置基準について」が策定されています。
バス運転手に対する労働環境の改善です。
- 拘束時間が16時間を超える場合
- 運転時間が2日平均で1日9時間を超える場合
- 連続運転時間が4時間を超える場合
※上記の基準は、今後も引き続き適用されます。
↓今後これらに加えて、2013年8月1日より適用↓
- 昼間・・原則一運行9時間まで「週2回まで一運行10時間まで可」【注意:1日の運転時間は、2日平均で9時間が限度】
- 夜間・・一運行9時間まで
- 一日・・原則1日9時間まで「夜間ワンマン運行を行う場合を除き、週2回まで1日10時間まで可」 【注意:1日の運転時間は、2日平均で9時間が限度】
- 昼間・・原則一運行500㎞まで(以下条件※1を満たした場合600㎞まで)
- 夜間・・原則一運行400㎞まで(以下条件※2を満たした場合500㎞まで)
- 一日・・一日に2つ以上の運行に乗務する場合の合計は600㎞まで(注意:この時、運行と運行の間に連続1時間以上の休憩を入れなければ、別運行とは見なさない。一方、一日の乗務の中で2つの夜間ワンマン運行に乗務する場合には、連続1時間以上の休憩を挟んでいても1つの夜間ワンマン運行とみなす。)【以下条件※3を満たした場合、当該合計は週2回まで600㎞超えが可】
条件※1
- 運行中に1時間以上の休憩(1回20分以上で分割可)
- 乗務中の体調報告
条件※2
- 運行前11時間の休憩を確保しており、一運行の乗務時間が10時間以内又は運行途中に連続1時間以上の休憩を確保
- 運行指示書上、実車2時間毎に20分以上の休憩を確保
- 乗務中の体調報告
- デジタコによる運行管理
条件※3
- 複数の運行それぞれの実車距離は、「一運行の実車距離」の範囲内
- 乗務中の体調報告
- デジタコによる運行管理
連続乗務回数・連続運転時間
- 昼間・・ ━
- 夜間・・連続4夜まで(実車距離400㎞超は連続2夜まで)
- 一日・・ ━
- 昼間・・高速道路の実車運行区間で概ね2時間まで
- 夜間・・実車運行区間で概ね2時間まで
- 一日・・ ━
休憩時間
- 昼間・・運転時間4時間毎に合計30分以上(実車距離500㎞超えは運行途中に合計1時間以上(1回20分以上で分割可)
- 夜間・・実車運転概ね2時間毎に連続15分以上(実車距離400㎞超えは、実車運転概ね2時間毎に連続20分以上)
- 一日・・ ━
休息期間については、運転者の所在地での休憩時間が、それ以外の場所での休息期間よりも長くなる必要があります。つまり、行先で宿泊するような運行が長くなる場合には注意が必要です。
バス運転手労働条件の特徴
バス運転手の労働条件には、以下のような特徴があります。
- 【長時間労働】バス運転手は、長距離や時間のかかる路線での運行が多く、運転時間が長時間に及ぶことがあります。そのため、長時間の運転による疲労が蓄積される可能性があります。
- 【不規則な勤務時間】バス運転手の勤務時間は、運行スケジュールによって不規則になることがあります。また、休日や深夜勤務なども含まれるため、生活リズムの乱れや家族との時間の確保に影響が出ることがあります。
- 【運転に関わる危険性】運転中に交通事故やトラブルが発生する可能性があり、運転中は常に集中力を維持する必要があります。また、気象条件や道路状況によっては、運転が困難になることもあります。
- 【ルールや法令の遵守】バス運転手は、道路交通法や労働基準法などの法令や企業の規則に従って運転しなければならず、違反することができません。また、安全で快適な運行を維持するため、運転技術やコミュニケーションスキルなども必要とされます。
- 【人との接触が多い】バス運転手は、乗客やバス会社の社員との接触が多いため、コミュニケーション能力が求められます。また、乗客からのクレームや問い合わせに対応することもあります。
以上のような特徴から、バス運転手は、体力的にも精神的にも負荷がかかる仕事であることが分かります。バス運転手にとっては、安全に運行することが最優先であり、そのために適切な労働環境や待遇が必要とされています。
最後に
法改正によるバス運転手の拘束時間の見直しは、安全運行と労働環境の改善に向けた重要な一歩です。しかし、現場での遵守や適切な運行管理が徹底されなければ、問題は根本的に解決しません。今後も業界全体での取り組みが求められ、運転手が安心して働ける環境づくりが進められることが期待されています。