大型トラックの運転席や荷台は、非常に高い位置にあり、乗り降りは容易ではありません。実際、その高さはまさに高所作業とも言えるものです。しかし、運転席や荷台への乗り降りは些細な作業と見落とされがちであり、その油断が重大な事故につながる可能性もあります。
大型トラックの乗り降りにおける危険性と対策。高所作業としての意識を持ちながら、『三点支持』を守ることで、安全な作業を実現。
三点支持とは
「三点支持」とは、登山や岩登りの際に両手と片足、または両足と片手の三つを地面や岩に接触させることで、安定した姿勢を保つことができます。この方法を用いることで、転倒のリスクを減らし、安全に動作を行うことができます。
三点支持(さんてんしじ)
岩登りの基本姿勢。四肢のうち三肢で体を支えること。一肢だけを自由にして次の手がかり・足場へ移動する。三点確保。
引用:デジタル大辞泉(小学館)
大型トラック運転席は地上から2メートル以上の高さ
トラックの運転席は通常、地上から2メートル以上の高さに位置しており、運転手が安全に乗降するためには注意が必要です。
三点支持は安全性を確保するための有効な手法の一つですが、特にトラックの運転席での乗降時に有効です。トラックの運転席への乗降は、一般的には専用のアシストグリップやステップを使用して行われます。これらの装置や手段を利用することで、運転手は安全かつ効率的に乗降することができます。
意外に多い転落事故
貨物運送事業における事故発生状況を見ると転落事故は全体の3割以上を占めていることがわかります。
- 墜落・転落 31.5%
- 転倒 18.6%
- 飛来・落下 19.3%
- 激突される 8.5%
- 巻き込まれ 7.0%
- 激突する 5.4%
事故の形式は「墜落、転落」が最も多く、この事故の起因物は7割以上が「トラック」で災害の半数近くが3ヵ月以上の休業を必要としています。
転落事故の様々な理由
大型トラック乗降時の転落事故も様々な理由があり、事故原因はどれも基本姿勢が崩れた状態での事故のようです。
〇 運転席からの昇降時における転落事故
① 雨雪等が原因で、ステップから足を滑らせた
② ステップの段数を勘違いし、足を踏み外した
③ 昇降時に手荷物を持っていたこと等が原因で、グリップをつかみ損ねた
④ 着地した地面が不整地であったことで着地に失敗した
⑤ 運転席から飛び降りた引用:一般社団法人 群馬県トラック協会
運転席からの転落事故は、致命的な結果をもたらす可能性があるため、極めて重大な問題です。運送業者や運転者自身は、これらの事故を最小限に抑えるために、安全対策を徹底し、予防策を実施することが不可欠です。
三点支持を実践
運送業者は、従業員に対して適切な安全教育やトレーニングを提供し、日々の業務での安全対策を徹底することが重要です。具体的には、乗降時には常に三点支持を意識し、手すりやステップの使用を促すなどの対策が有効です。
三点支持は、大型トラックの運転席での乗降時の安全性向上に寄与するだけでなく、様々な高所作業や危険な状況での安全対策としても有効です。運転者や作業員は、この基本姿勢を念頭に置き、常に安全第一の意識を持つことが重要です。
- 運転席3段ステップの1段目に足を着く
- 右手用アシストグリップを握る
- 左手用アシストグリップを握る
この状態で乗降するのが「三点支持」です。降りる時は乗る時の逆パターン。
※メーカーや年式によって2段ステップだったり、左用アシストグリップが設置されていない場合があります。
墜落・転落災害を無くするために行うこと。
墜落・転落事故を防止するためには、以下のような対策が考えられます。
- 安全な作業場所の確保。高所作業や安全でない作業場所での作業を行わないこと。
- 安全な設備・装置の使用。高所作業には安全な設備・装置(ハーネス、ロープ、はしごなど)を使用する。
- 適切なトレーニング。作業者に適切なトレーニングを提供し、高所作業の安全に関する知識を持たせる。
- 作業計画の確立。作業前に適切な作業計画を確立し、危険を最小限に抑える。
- 危険評価。作業中に常に危険因子を評価し、危険を回避すること。
- 作業場所や建物、梯子、足場などの安全確保を行い、転落や墜落の危険性を排除します。
- ヘルメット、保護眼鏡などの安全器具を適切に使用することで、怪我のリスクを減らします。
- 作業場所や器具の定期的な点検を行い、異常があれば早期に対処することで、事故の発生を未然に防ぎます。
- 上層部が安全意識を高め、作業員が安全に作業することを常に考えるような風土を作り出すことで、墜落・転落災害を減らすことができます。
これらの対策を実施することで、墜落・転落事故のリスクを最小限に抑えることができます。
安全指導
運転席からの転落事故が多いこと重く見たトラック協会は運送業者に対して安全対策の徹底を呼び掛けると共に安全指導も行っています。
- 乗降時の三点支持を確実に行う
- 周り状況を確認する
- 焦らず確実の乗降
- 飛び降りたりしない
- 万が一事故が発生した場合は事例を共有する
荷台での作業
高所作業とは「2メートル以上の高さで行う作業」のことをいいます。2メートル以上の作業は安全に対する対策が必要。
ところが荷台への乗降は軽く見がち、無対策のまま実施での事故が多発、平成23年から5年間での平均23%(厚生労働省)を占めるほど発生しています。
はしごの安全使用
荷台への乗降は、はしごや昇降装置を適切に使用することが事故や怪我を予防するために不可欠です
- はしごの上部・下部の固定させる
- 足元に、滑り止め(転位防止措置)
- はしごの上端を上端床から60㎝以上突出させる
- はしごの立て掛け角度は75度程度が必要
まとめ
安全対策の基本原則の一つである「三点支持」は、墜落や転落による災害を防ぐための重要な手法です。この原則によって、作業者などが高所や危険な場所での作業や移動を安全に行うことが可能となります。
高所作業は多くの業種で不可欠な業務の一部となっており、そのリスクを最小限に抑えるための安全対策は非常に重要です。