みなさん働き方改革ってご存知でしょうか、第196回通常国会において、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。
「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するために「就業機会の拡大や意欲・能力を発揮出来る環境を目指し、働く人が将来的に展望を持てるようにすることを目指す」とあります。
働き方改革の課題でもある「年次有給休暇の取得」
年次有給休暇は、労働者の心身の健康を維持し、働く人々が十分な休息を取ることを目的としています。しかしながら、会社や同僚への遠慮により取得者が低いのが現状。
この問題に対処するため、労働基準法が改正され、企業に対して年5日以上の有給休暇取得を義務付けることとなりました。改正法は2019年4月から施行され、全ての企業に適用されます。この義務により、労働者は年5日以上の有給休暇を取得できる権利を有することとなります。
この改正は、労働者の健康と働き手のワークライフバランスを向上させるための重要な一歩です。企業は労働基準法の改正を順守し、労働者が有給休暇を取得できる環境を整備する責任があります。これにより、労働者の働きやすさと生産性向上につながると期待されます。
有給休暇とは
有給休暇とは、労働者が労働契約に基づき、労働を休みながら給与を受け取ることができる休暇のことです。労働者が仕事から離れて休息やリフレッシュをするために利用することが一般的です。
有給休暇は労働者の労働条件や労働基準法によって定められており、一般的には、労働者が一定期間働いた後に一定の日数の有給休暇が与えられ、労働者が自由にその日数分の休暇を取得することができます。
有給休暇は労働者の健康やワークライフバランスの維持に寄与するだけでなく、労働者の労働意欲や生産性を高める効果もあります。労働者は休息を取ることで疲労回復やストレス解消が図れ、仕事に対するモチベーションや満足度が向上することが期待されます。
労働者は労働基準法や労働契約に基づき、適切な手続きを経て有給休暇を請求することができます。企業は労働基準法に則り、労働者が有給休暇を取得しやすい環境を提供する責任があります。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
「有給休暇」取得ルール
年次有給休暇の付与日数や取得にはルールがあります。
- 6ヶ月継続して雇われていること
- 全労働日の8割以上出勤していること
以上の2点を満たしていれば年次有給休暇を取得することができます。
年次有給休暇の付与日数
- 使用者は、労働者が雇入れの日から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の年次有給休暇を与えなければなりません。
- (※)対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。
パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数
- パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、年次有給休暇の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。
- 比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。
「有給休暇」の付与ルール
- 年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされています。
- 労働者が具体的な月日を指定した場合には、使用者は、労働者から年次有給休暇を請求された時季に、年次有給休暇を与える必要があります。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、年次有給休暇の時季を変更することができます。
- 年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要があります。
「有給休暇」消化しないとどうなる?
労働基準法において、企業が労働者に有給休暇を取得させない場合、企業側に対して法的な罰則が課せられる可能性があります。
罰則規定が存在
有給休暇を消化しないと、使用者側に対して、労働者一人1罪として罰則規定が存在しますが労働基準監督署では原則として、是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていくとしています。
違反条項 | 違反内容 | 罰則規定 | 罰則内容 |
労働基準法 第39条第7項 | 年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合 | 労働基準法 第120条 | 30万円以下の罰金 |
労働基準法第89条 | 使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合 | 労働基準法 第120条 | 30万円以下の罰金 |
労働基準法第39条 | 労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合 | 労働基準法 第119条 | 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
「有給休暇」を活用しずらい風土
日本においては、有給休暇を活用しづらい風土が一部存在、理由として以下の要因が挙げられます。
- 【長時間労働文化】 日本では長時間労働が一般的であり、働き詰めの状況が生じることがあります。このような状況では、有給休暇を取得することが難しくなります。
- 【労働者同士の競争意識】 労働者同士の競争意識が強く、他の同僚に迷惑をかけたり、仕事が溜まってしまったりすることを恐れる傾向があります。そのため、有給休暇を取得することに対して気兼ねやためらいが生じます。
- 【上司や組織の風潮】 上司や組織の中には、有給休暇を取得することを推奨せず、積極的に取得しないような雰囲気がある場合もあります。これによって労働者が有給休暇を申請することに抵抗感を抱くことがあります。
- 【休暇日数の制約】 日本の労働基準法では、一定の勤務期間後に初めて有給休暇が与えられるという規定があります。また、年間の有給休暇日数にも上限が設けられています。これにより、十分な休息を取ることが難しいと感じる労働者も存在します。
以上の要因が重なり合い、日本において有給休暇を活用しづらい風土が形成されています。しかし、近年では働き方改革やワークライフバランスの重要性が認識されつつあり、有給休暇の取得促進に向けた取り組みも進んでいます。
従業員がためらいなく休むことができる計画年休
計画年休制度は、労働者の有給休暇の取得日をあらかじめ指定することで、法人が労働者の代表と労使協定を結ぶことによって導入される制度です。
計画年休制度では、労働者はあらかじめ指定された日程に基づいて有給休暇を取得します。法人側は、労使協定に基づいて有給の取得日を事前に計画し、従業員に通知することができます。これにより、法人は従業員を確実に休ませることができます。
この制度によるメリットは、法人が労働者のスケジュールや業務の状況に合わせて有給休暇を計画できることです。また、従業員も事前に有給休暇のスケジュールを知ることができるため、プライベートの予定や休暇の計画を立てやすくなります。
ただし、計画年休制度では、従業員の意向や状況に柔軟に対応することが難しくなる可能性があります。また、労働者にとっては、自身の都合や予定に合わない有給休暇のスケジュールが指定されることもあり得ます。
計画年休制度は、労働者と法人の間で労使協定を結ぶことによって導入されるため、具体的な制度の内容や適用条件は労使協定によって異なる場合があります。そのため、詳細な情報や具体的な運用方法については、労働者や法人の労使関係のルールや規定を確認する必要があります。
計画年休制度メリット・デメリット
- 【予測可能なスケジュール管理】 法人側が有給休暇の取得日を事前に指定できるため、従業員のスケジュール管理や業務計画がしやすくなります。これにより、効率的な業務運営が可能となります。
- 【休暇の希望調整が不要】 従業員は事前に指定された有給休暇の日程を把握しているため、休暇の希望調整や調整のための交渉が不要となります。従業員は自身のスケジュールやプライベートの計画を立てやすくなります。
- 【休暇の均等な取得促進】 法人側が有給休暇の日程を計画することで、従業員全体に対して休暇の均等な取得を促進することができます。従業員の健康やワークライフバランスの向上につながる可能性があります。
- 【柔軟性の制約】計画年休制度では、法人が有給休暇の日程を事前に指定するため、従業員の意向や特定の事情に柔軟に対応することが難しくなります。個々の従業員のニーズや状況に合わせた休暇の取得が難しくなる可能性があります。
- 【休暇日程の制約】 法人が有給休暇の日程を指定するため、従業員が希望する特定の日程やイベントに休暇を取ることができない場合があります。これにより、従業員の満足度やモチベーションの低下を招く可能性があります。
- 【労使協定の必要性】 計画年休制度を導入するためには、労働者と法人の間で労使協定を結ぶ必要があります。労使協定の交渉や合意形成に時間や労力がかかる場合があります。
「有給休暇」年5日に達した場合
労働基準法改正により、年5日以上の有給休暇を既に請求・取得している労働者に対しても、使用者が時季指定をする義務はありません。労働者は自身の希望に基づいて有給休暇を取得することができます。
改正後の労働基準法では、年5日以上の有給休暇を取得する権利が労働者に与えられており、労働者は自分の都合や希望に合わせて有給休暇を申請することができます。使用者は労働者の希望を尊重し、できる限り有給休暇を取得させるよう努めることが求められます。
まとめ
従来、日本では有給休暇の取得率が低く、同僚への気兼ねや請求することへのためらいなどの理由から、労働者が十分な休息を取ることが困難でした。しかし、改正により、全ての企業において年10日以上の有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
この改正により、労働者は年5日以上の有給休暇を取得する権利を持つこととなります。これにより、労働者はより健康的な働き方が実現でき、ストレスの軽減やモチベーションの向上にもつながるでしょう。
企業側には、労働基準法の改正を順守し、労働者が有給休暇を取得しやすい環境を整備する責任があります。適切な休息を取ることは労働者のパフォーマンスや生産性向上にも寄与するため、企業にとっても利益となるはずです。
これからは、有給休暇の取得促進に向けた取り組みがより重要になってきます。労働者自身も積極的に有給休暇を申請し、自身の健康とワークライフバランスを大切にすることが求められます。