近年、深刻化するバス運転手の人手不足と過酷な労働環境。その背景には「長時間拘束」という問題があります。
政府は働き方改革の一環として、バス運転手の拘束時間に関する規制緩和を進め交替運転手配置の一部改正を行いました。拘束時間緩和の内容やその狙い、バス運転手の交替配置の重要性、現場に与える影響、そして今後の展望について詳しく解説します。
バス運転手交替の配置とは

「バス運転手交替の配置」とは、長時間労働や安全運行を確保するために、運行途中で運転手を交替させる仕組みや体制のことを指します。これは特に長距離路線や観光バス、高速バスなどで重要な役割を果たします。
基本的な仕組み
- 交替場所(交替点)を事前に設定し、そこに次の運転手を配置しておく、又はバスに同乗。
- 運転手は一定時間または一定距離ごとに交替し、過労や集中力の低下を防ぐ
- 一人の運転手が連続して運転できる時間には法的上限があるため、これを守る必要がある
なぜ重要なのか?
- 安全性の確保:過労運転による事故を未然に防ぐ
- 法令遵守:労働基準法・運輸規制に基づく勤務管理
- 運転手の健康維持:長時間拘束を避け、働きやすさ向上
- 業界イメージ改善:若手人材の確保や離職率の低下にもつながる
拘束時間・休日

バス運転手の勤務は、労働時間法に基づいて管理されています。
1日の拘束時間は原則13時間以内ですが、特別な事情があれば最大16時間まで延長できます。
また、1週間の拘束時間は65時間以内と決められています。
休日については、休息時間に加え連続24時間以上の休みが必要、運転手の運転時間や待機時間を適切に管理することで、過労や健康被害、事故の防止につながります。
長時間運転や不規則な勤務が多いため、健康と安全を守るには、法令に基づいた労働時間と休日の管理がとても重要です。
- 1日の拘束時間は原則として13時間以内
- 延長する場合でも最大16時間が限度
- 休憩時間は断続8時間以上必要
- 1週間の拘束時間は原則として65時間以内(4週間の平均)
- 休日は「休息時間+24時間の連続した時間」
- 休息時間は連続8時間以上「休日は8時間+24時間=32時間以上の連続した時間が必要
参考:厚生労働省
交替運転者の配置基準一部改正

2013年8月1日、国土交通省により「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」が一部改正され、その中で「高速バス及び貸切バスの交替運転者の配置基準について」が策定されています。
バス運転手に対する労働環境の改善です。
- 拘束時間が16時間を超える場合
- 運転時間が2日平均で1日9時間を超える場合
- 連続運転時間が4時間を超える場合
↓今後これらに加えて、2013年8月1日より適用↓
- 昼間・・原則一運行9時間まで「週2回まで一運行10時間まで可」【注意:1日の運転時間は、2日平均で9時間が限度】
- 夜間・・一運行9時間まで
- 一日・・原則1日9時間まで「夜間ワンマン運行を行う場合を除き、週2回まで1日10時間まで可」 【注意:1日の運転時間は、2日平均で9時間が限度】
- 昼間・・原則一運行500㎞まで(以下条件※1を満たした場合600㎞まで)
- 夜間・・原則一運行400㎞まで(以下条件※2を満たした場合500㎞まで)
- 一日・・一日に2つ以上の運行に乗務する場合の合計は600㎞まで(注意:この時、運行と運行の間に連続1時間以上の休憩を入れなければ、別運行とは見なさない。一方、一日の乗務の中で2つの夜間ワンマン運行に乗務する場合には、連続1時間以上の休憩を挟んでいても1つの夜間ワンマン運行とみなす。)【以下条件※3を満たした場合、当該合計は週2回まで600㎞超えが可】
連続乗務回数・連続運転時間
- 昼間・・ ━
- 夜間・・連続4夜まで(実車距離400㎞超は連続2夜まで)
- 一日・・ ━
- 昼間・・高速道路の実車運行区間で概ね2時間まで
- 夜間・・実車運行区間で概ね2時間まで
- 一日・・ ━
休憩時間
- 昼間・・運転時間4時間毎に合計30分以上(実車距離500㎞超えは運行途中に合計1時間以上(1回20分以上で分割可)
- 夜間・・実車運転概ね2時間毎に連続15分以上(実車距離400㎞超えは、実車運転概ね2時間毎に連続20分以上)
- 一日・・ ━
休息期間については、運転者の所在地での休憩時間が、それ以外の場所での休息期間よりも長くなる必要があります。つまり、行先で宿泊するような運行が長くなる場合には注意が必要です。
なぜ規制緩和が行われたのか?

2012年に発生した関越自動車道での高速ツアーバス事故をきっかけに、バス業界では安全確保と労働環境の改善が大きな課題となりました。
これを受けて政府は2013年8月、バス運転手に関する配置基準を一部改正、安全運行の徹底が図られるようになりました。
最後に
バス運転手の拘束時間規制緩和は、業界の構造的な課題を浮き彫りにしています。短期的な効果にとどまらず、働き手にとって安全で魅力ある職場環境を整えることが本質的な解決策となるでしょう。今後の政策と企業の取り組みに注目が集まります。