風力発電は、風の力を利用して電力を生み出す再生可能で持続可能なエネルギー源、燃料を必要とせず、CO2排出がほとんどないため、環境に優しく気候変動対策にも貢献します。
一方で、風の不安定さや設置場所の制約、風車の建設・製造に必要な資源、騒音や景観への影響などの課題もありますが、技術の進歩により効率は向上しており、風力発電は今後ますます重要な持続可能エネルギーとして期待されています。
風力発電とは

この技術の原理は、風車や風力タービンによって風の運動エネルギーを回転エネルギーに変換し、それを発電機で電力に変換することです。
風は自然のエネルギー源であり、風の資源が豊富な地域では持続的な電力供給が可能、風力発電所は風の強い地域や海上に設置され、地域のエネルギー需要を満たすことができます。
風力発電の特徴
- 温室効果ガスを発生しない、風力発電は石油や石炭などの燃料を使用せず、環境に優しいエネルギー源です。
- 風力発電の技術が進歩することにより、製造コストが低下し、経済的なエネルギー源となっています。
- 風力発電は太陽光発電と同様に、天候に左右されず使用することができます。
- 風力発電は大規模な発電所を建設する必要がなく、地域別に小規模な発電所を設置することができます。
- 風力発電の発電量や状況などはリモートモニタリングにより簡単に確認することができます。
太陽光発電は昼間の太陽光を頼りに発電するのに対して、風力発電は一定の風速があれば発電できます。
風車の羽根(ブレード)が風を受けて回転し、その回転力で発電機を起動させ、電気を作ります。大型風車(1千kW以上)、中型風車(1千kW未満)の電気エネルギーが作れます。
風力発電の電気エネルギー交換率は40%
風の運動エネルギーを100%とした時に、風力発電はどれくらいの電気エネルギーを得ることができるのでしょうか。
一般的なプロペラ型風車では、ロータ(回転体)で生じる空気抵抗や発電機の機械損失を差し引いた残りの30%~40%を電気エネルギーとして取り出すことができます。
風車発電機の構成
風車発電機は以下のような部品から構成されています。
- ブレード・風を受けて回転する旋転翼です。
- ハブ・ブレードを固定する部分
- 増速機・風力をエネルギーに変換するために、タービンを回転させます。
- 発電機・回転したタービンから得られた動力を電力に変換する装置です。
- ナセル・ブレードの回転を増幅させる増速機や電気に変える発電機、制御用コンピューターなどを収める
- 控制システム・風力発電システムの状況をモニタリングし、必要に応じてタービンの方向や回転速度などを調整する装置です。
プロペラ型風力発電機は、基礎工事を行った土台の上に円柱状のタワーを設置し、そのタワーの上端にナセルとブレードが組み立てられています。
ブレードはハブによってロータ軸に連結されており、ナセルの中にはロータ軸、増速機、ブレーキ装置、主軸、発電機が収納されています。
このうち増速機は、ブレードからの回転を発電機に必要な高い回転数まで歯車(ギヤ)を用いて増速させます。また、タワーの内部にはメンテナンス時に使用する昇降機やはしごなどが設置されています。
ヨー駆動装置

風車発電機のヨー駆動装置とは、常に風の強さや風向きが変わる風に対応する装置です。
たとえば、台風や台風並みの風が吹いた場合、風車が壊れないように可変ピッチが働き、風車がまわらないように制御しています。
そのほか、ブレード面を常に風向きに合わせて角度を変えたり、出力を効率的に制御しています。これをヨー制御といいます。
大型風車とウインドファーム
効率良く電気エネルギーを得るためには風力が要、そのためには受風面積と高さがポイント
風車の大きさは一般的にタワーの高さ60~80m、ロータ直径が80~90m程度、市場における大型化はまだまだ進行中です。
そのほか、大型風車をたくさん並べて建設する方法。このときに電力系統・変電所・運転監視施設・送電線も設置して、風力発電機で発電された電力を、変電所を経て電力系統に送ります。これをウインドファームといいます。
風力発電産業の課題

- 【不安定な風力の供給】 風力の発電は天候条件に大きく左右されるため、不安定な風力により電力供給が不安定になる問題があります。
- 【設備コストの高さ】 風力タービンの設置や配線などに必要な設備は高額であり、風力発電の立地選定や設備計画には工数やコストがかかります。
- 【環境影響】 風力タービンは大規模なものであり、野生動物や環境などに影響を与えることがあります。
- 【配線とグリッドの接続】 風力発電のために生産された電力を使用するためには、地域の電力グリッドへの接続が必要ですが、これには工数とコストがかかる場合があります。
- 【風力発電のスケールアップ】 風力発電はまだ普及していないため、大規模な風力発電施設の構築や運用には大量の資金やリソースが必要です。
これらの課題を克服するために、政府や産業界は技術の開発や普及、設備の低コスト化、グリッド接続の改善などの取り組みを進めています。
日本が抱える風力発電の最大の課題は系統制約と言われています。

系統制約とは、火力発電や太陽光発電などの電力を送電網に接続するときに電力需給バランスが崩れないよう出力抑制する場合に生じる問題です。
系統制約は、電力システムにおける制約や制約条件のこと、電力供給と需要のバランスを維持し、電力ネットワークの安定性を確保するために考慮される条件や制約のことを指します。具体的な例としては、電力容量制約、電圧制約、周波数制約などがあり、系統制約の管理は、電力ネットワークの運用者や発電事業者によって行われます。
再生可能エネルギー電源の導入が急拡大する一方で、送電設備が現状のままでは送電容量に空きがなくなり、再生可能エネルギーで作った電気を送れなくなります。
このような系統制約の問題を解決するため、火力発電や揚水発電の調整力の強化、送電設備の整備、地域関連係線の増強などの取り組みが進められています。
最後に
日本における風力発電の導入ポテンシャルは、陸上と洋上を合わせて14億kWを超えると推測されていて、日本のメーカーは大型風車事業において、欧米や中国のメーカーと比べて競争力が劣るとされています。
その主な理由は、欧米や中国が風力発電を主力事業として重点的に取り組む一方で、日本のメーカーは多様な事業を抱える中で風力発電は一部事業に過ぎず、経営資源の配分や優先順位が低いためです。
今後、日本の風力発電市場を活性化させるには、メーカーが大型風車事業に積極的に取り組むとともに、政府や関連団体の支援、投資環境の整備が重要、これにより、日本の風力発電産業は成長し、世界市場での競争力を高めることが期待されます。


