アドブルー(AdBlue®)と「DPF」がディーゼルエンジンに必要な理由

バス・トラック

1970年代の日本では、ディーゼルエンジンによる排出物であるNOxやPMが大気汚染と健康被害の原因として深刻な問題となりました。これらの有害物質は、都市部や工業地域などでの濃度が高く、特に呼吸器系の疾患や大気中の汚染が原因での健康被害が報告されました。

その後、環境保護の観点からディーゼル車の排気ガス浄化技術が急速に進歩しました。その中心的な技術として尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムとDPF(Diesel Particulate Filter)が挙げられます。尿素SCRシステムは、排気ガス中のNOxを尿素水溶液(尿素水)と触媒の作用により無害な窒素と水に変換することで、大気中への窒素酸化物の放出を効果的に削減します。一方、DPFは微粒子状物質(PM)を捕捉するフィルターであり、エンジン排気中の固体状の微粒子を効果的に除去します。

これらの技術の導入により、ディーゼル車の排出量におけるNOxやPMの削減が実現され、大気汚染や健康被害のリスクが低減されました。さらに、環境への負荷が軽減されるだけでなく、都市部などでの大気品質の改善にも寄与しました。

現在では、より効率的で低排出の次世代の排気ガス浄化システムが開発されており、さらなる環境負荷の削減が期待されています。これらの技術の進化は、ディーゼル車の持続可能性や環境への影響における重要な進展であり、自動車産業の技術革新の一端を担っています。

アドブルーの役割

アドブルーパネル標示

尿素SCRシステム(排気ガス浄化技術)にアドブルーは使用されます。

触媒内部の排気ガスに直接アドブルーを噴射しNOx(窒素酸化物)を科学反応により窒素分子N2と水H2Oに転換させます。つまり有害物質を無害にします。

2003年よりディーゼル車規制条例が施行されたことを受けて各メーカーは排ガス低減効果実績のある尿素SCRシステムを採用。もともと尿素SCRは火力発電などの排ガス処理で使われていたシステムでしたが、2004年に実用化に成功。

アドブルー噴射システム

アドブルーは車両に設置された専用タンクに貯蔵され、排気内に噴射されますが噴射量はエンジンコントロールユニット (ECU)により制御されています。運転状況に基づいて噴射量を低く抑えることで補充する間隔をのばし、タンク容量を削減しています。

特徴

生体の尿に多く含まれる尿素を無機化合物から合成された有機化合物に純水を混ぜたのが高品位尿素水(アドブルー)です。

無色、無臭、無害の安全な製品なため保存や輸送が容易なのに加え、取り扱いに特別な資格も必要としないのが特徴、医薬品や化粧品などに多く使われています。

アドブルーが空だとエンジンはかからない

アドブルーが空になるとエンジンは始動出来なくなるので注意が必要です。

アドブルーはエンジン制御装置により計算されて排気内に噴射され、走行距離に応じて消費しますが、年式や重量で消費量が異なりますが、軽油消費量のおよそ2 ~ 6%程度の消費と言われています。

アドブルーの価格

アドブルー現在の価格相場は1ℓ100円~200円。

尿素SCRシステム搭載車には必ずアドブルー専用タンクが付いています。容量は普通自動車で20ℓ前後、大型車で50ℓ前後。

取り扱いに特別な資格が必要ないアドブルーはカー用品店や通販などで簡単に買うことができます。

貯蔵と取り扱い

AdBlueは、酸性液体であるため、適切な貯蔵と取り扱いが必要です。貯蔵には、酸化によって変質しないよう、防湿・防陽性・防炎などの条件を整える必要があります。また、直射日光の当たらない場所で、室温(約20℃)で保管することが望ましいです。

取り扱いに関しては、酸性液体に関連する注意事項を遵守し、安全な状態で使用することが重要です。例えば、使用前にラベル・説明書などの情報を確認し、安全装置(手袋・メガネ・防護服など)を着用して作業することが推奨されます。また、飲み込んだ場合は直ちに医師に連絡することも重要です。

純粋であるアドブルーは無色透明で人体に対しては無害で安全に取り扱い出来るが、金属に対して腐食性を有するため、貯蔵と輸送は注意が必要です。

世界のディーゼル車規制

世界のディーゼル車規制

世界中で、ディーゼル車に対する規制が導入されていて、これらの規制は日本同様、空気汚染や大気汚染の抑制を目的としています。

例えば、欧州諸国では一部の大都市で、特定の期間に内部燃焼エンジンを搭載した車両(ディーゼル車)の使用が禁止または制限されています。

また、アメリカ合衆国やカナダでも、低排出量のディーゼル車に対する特別な規制が設けられていますが、これらの規制は高排出量の車両に対する規制とは異なり、低排出量車両の使用を奨励することを目的としています。

アジア圏では、中国やインドなどでも、大気汚染の問題が深刻化しているため、ディーゼル車に対する規制が導入されている地域もあります。

一般的に、各国・地域によって異なりますが、空気汚染や大気汚染の抑制を目的として、規制が導入されていることが多いです。

DPF

DPF表示パネル

DPFは、Diesel Particulate Filterの略です。これは、排ガス中のダイジェストパーティクル(粒子状の汚染物質)を捕集するために使用される自動車用のフィルター、DPFは特にディーゼルエンジンを搭載した車両に装着され、排ガスからの有害物質の排出を抑制し、環境保護の観点から重要な役割を果たしています。

ⅮPFの役割

PM(粒子状物質)はトラックやバスなど、ディーゼル車から排出される黒煙に含まれており、大気中に浮遊してます。DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)は排ガス中のPM(粒子状物質)をフィルターで捕集する処理装置です。

てつ
てつ

ちなみにDPFはメーカーによって呼び方が違います。

  • DPF=三菱ふそう、日産、マツダ
  • DPD=いすゞ
  • DPR=日野、トヨタ

目的と役割は一緒です。

燃焼再生

DPFは微粒子捕集フィルターでひたすら捕捉するため、使い続けるとフィルターが目詰まりをおこし機能が低下するため、燃焼再生させます。

溜まったススを約600度で燃焼させます。

自動再生と手動再生

自動再生の場合、ある程度走行すると再生ランプが点灯し自動燃焼機能により、車は普通に運転しているだけで勝手に焼いてくれます。再生中は車の回転数が上がった状態(Nで停止中のみ)になります。

手動再生の場合、再生ボタンを押せば、およそ30分~40分車を停車させた状態で燃焼させます。

強制再生の繰り返しや燃焼再生無視は危険

適正に燃焼再生させることで触媒本体の寿命を延します。

再生ランプが点灯したにもかかわらず無視するとススが溜まりすぎたり、強制再生を繰り返すと熱で本体が溶ける場合もあり、故障の原因になります。

フィルター目詰まりは避けられない

DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)は長年燃焼再生させているとどうしてもの PM が堆積しフィルターが目詰まりします。

  • 再生ランプ点灯の間隔が短くなる
  • 自動再生が追い付かないため頻繫に手動再生ランプが点灯する
  • 燃焼再生時間が長い
  • 異常ランプ点灯

このような症状はディーラーか整備工場にて「強制再生」や「洗浄」または交換などの処置が必要です。

ディーゼル車規制の今後

ディーゼル車規制に関する具体的な規制内容や法律は国や地域によって異なりますが、世界的には環境問題の解決のためにディーゼル車の規制が進んでいます。

近年、多くの都市や国が、環境規制の一環としてディーゼル車の使用制限や禁止を実施しています。その背景には、ディーゼル車が排出する窒素酸化物や微小粒子状物質などの大気汚染物質が、人々の健康に悪影響を与えることが知られるようになったことがあります。

特に、欧州連合では、2020年にディーゼル車の規制が強化されました。これにより、EU加盟国での新車販売において、ディーゼル車のCO2排出量が厳しく制限されることになりました。また、各国でディーゼル車の使用制限が実施されており、将来的にはディーゼル車の販売自体が禁止される可能性もあります。

一方、ディーゼル車に代わるエコカーとして、電気自動車や水素自動車などのエコカーの普及が進んでいます。これらのエコカーは、ゼロエミッション車として、環境に優しいとされています。

総じて言えることは、ディーゼル車規制は今後も進む可能性が高いということです。環境に配慮した政策が求められる中、エコカーの普及や新技術の開発により、よりクリーンな社会を目指していくことが求められます。

日本でも2003年当時の東京都知事でもある石原慎太郎が主導し、八都県市で実施された排ガス規制条例により浄化装置の装着が義務化されました。

2010年代以降の大型トラック・バスは尿素SCRシステム(排気ガス浄化技術)とDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)が併用する排気ガス浄化装置が、標準装備となっています。

この記事を書いた人
てつ

➤こんにちは「てつ」と申します。
➤神奈川県在住の50歳代の運転手です。
私は、長年にわたり運転手を続けてきましたが、交通事情や環境問題について深い関心があり、自分ができることを考えながら、日々の運転に取り組んでいます。
➤近年では環境問題に配慮した車両や燃料の使用も求められており、運転手は省エネやエコドライブなどの取り組みが重要です。
➤このブログでは、これまでの出来事や経験を記事で紹介しています。

バス・トラック
タイトルとURLをコピーしました