再生可能エネルギーは、環境への負荷を減少させつつ、持続可能なエネルギー供給を実現するための重要な技術です。太陽電池エネルギーと水素燃料電池エネルギーは、その代表的な例です。
太陽電池と水素燃料電池
太陽電池エネルギーは、太陽の光を直接電力に変換する技術です。太陽電池は主に半導体素材(一般的にはシリコン)から作られており、太陽光がこれに当たると、光子が電子を励起させて電流を生成します。この電流は電力に変換され、家庭や企業などでの電力供給に使用されます。太陽光発電は非常にクリーンであり、温室効果ガスの排出が少ないため、気候変動への対策にも貢献します。
水素燃料電池エネルギーは、水素を燃料として使用して電力を生成する技術です。水素ガスを酸素と反応させることで、電気化学反応が起こり、電力と水が生成されます。このプロセスは非常にクリーンであり、排出物として水しか生成されないため、環境に優しいエネルギー源とされています。水素燃料電池は主に自動車や産業用途で利用されており、ゼロエミッションの移動手段を実現するために期待されています。
これらの技術は、再生可能エネルギーの中でも重要な位置を占めており、石油や石炭などの化石燃料に依存せずに持続可能なエネルギー供給を可能にすることが期待されています。
太陽電池とは
太陽電池は、太陽光を利用して電気を発生する装置です。太陽電池は、半導体素材を用いた「光起電力効果」という現象を利用しています。
具体的には、太陽電池の中にある半導体素材に太陽光が当たると、電子が放出され、それによって電気が発生します。
太陽電池は、エネルギーを効率的かつ環境に優しい方法で生成するために広く使用されています。
一般的な太陽電池は、薄いシリコン板の上に、陽極と陰極の金属電極が配置されています。太陽光が太陽電池に当たると、シリコン中の電子が放出され、電極間に電流が流れるようになります。
太陽電池は、一般的に屋根に設置されたソーラーパネルなどの形で使用されています。これらのパネルは、太陽光を受け取って電気を生成し、家庭やビルなどの電力供給に使用されます。
また、離島や災害時など、電力が確保しづらい場所でも使用されています。
エネルギー発電「太陽電池」の仕組み
1個の太陽電池は1辺が12㎝ほどの黒いガラス板のようなものです。これを何枚か並べた平板を「モジュール」といい、このモジュールを何枚かつないだものが太陽電池の発電システムです。
ガラス板に太陽光が当たると電気が発生し、電極から電流が流れます。1個の電池の起電力は約0.5Vです。
家庭で使われる太陽電池はケイ素(シリコン)Siを使ったもので「シリコン太陽電池」といわれます。
構造は2枚の半導体(n型シリコン、p型シリコン)を透明電極と金属電極で挟んだだけのものです。動く部分は何もありません。
透明電極を通った太陽光は非常に薄くて透明なn型半導体の層を通り抜けてpn接合面に達します。するとここにいた電子が太陽光エネルギーを受け取って活動を始め、n型半導体の層を通って透明電極に達します。
そしてここから外部回路を経由して金属極電に達し、p型半導体の層を通ってもとにもどります。この外部回路を流れている電子が電流に相当するのです。
太陽電池、長所と短所
太陽電池は優れた能力をもつ電池ですが、長所だけではありません。短所もあります。それぞれ見てみましょう。
【長所】
- 保守・点検が不要:太陽電池は可動部分も消耗部分もありません。そのため故障もないため、保守・点検は基本的に不要です。
- 地産・地消:発電部分と電力消費部分を直結することができます。街灯の傘を太陽電池にしたら、人の手を加えなくても点灯し続けてくれます。
- 送電設備不要:電力を送る必要が無いので、送電線の必要がありません。
【短所】
- 価格が高価:コスト削減がこれからの課題
- 変換効率が低い:交換効率を高めることも重要な研究課題です
太陽電池が高価な理由
短所として決定的なのは、高価ということです。
太陽電池に用いるシリコンの純度は99.99999%が必要。この純度を満たすには、それだけの工場設備、電力エネルギーが必要とされ、必然的に価格が上昇します。
また、照射された太陽エネルギーのうち、何%を電力に変えられるかという変換効率も問題です。
現在では15~20%程度で、これを50%にまで高めるように、多くの研究が進められています。
水素燃料電池とは
水素燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を生成するエネルギー変換装置です。水素燃料電池は、化石燃料を使用しないため、環境に優しく、効率的なエネルギー源として注目されています。
水素燃料電池は、二つの電極を使って構成されています。陰極に水素が供給され、陽極には酸素が供給されます。この際、水素は陰極でプロトン(陽イオン)と電子に分解されます。プロトンは電解質膜を通り、陽極側に移動します。一方、電子は外部回路を通って陽極に移動し、この過程で電気が生成されます。そして、酸素とプロトン、電子が再び反応し、水という副産物が生成されます。
水素燃料電池は、発電所や自動車など、様々な分野で利用されています。自動車に関しては、排気ガスが水しか出ないため、環境に負荷をかけず、クリーンな移動手段として期待されています。しかし、水素の製造や貯蔵に課題があり、実用化にはまだ多くの技術的課題が残されています。
一般に燃料電池は燃料を燃焼することによって発生する燃料エネルギーを電気エネルギーに変える装置です。そのうち、燃料に水素ガスを用いるものを「水素燃料電池」といいます。
水素燃料電池の構造と原理
水素燃料電池は水素を燃料として燃焼し、そのエネルギーを電気エネルギーに変える装置です。補給された燃料に見合うだけの電力を生産し、燃料がなくなれば発電を止めます。これは水素を燃料とする火力発電と同じことです。つまり、燃料電池は電池というより、小型の携帯型発電所といったところでしょう。
上図は水素燃料電池の概念図です。電解質溶液の中に正負の電極が挿入され、それぞれに水素ガスH₂(負極)、酸素ガスО₂(正極)が供給されます。
各電極には触媒として白金(プラチナ)がPtがコーティングされています。
負極で水素ガスが触媒の力を借りて水素イオンH⁺と電子e⁻に分解されます。電子は外部回路を通って正極に移動し、これで電流が流れたことになります。一方H⁺は電解質溶液中を移動して正極に達します。ここで、H⁺、e⁻、О₂は一緒になり水(H₂О)となってエネルギーを生産します。
水素燃料電池の問題点
水素燃料電池にも、問題がないわけではありません。
- 【第1の問題点】:燃料の水素ガスは自然界には存在しないため、人間が作る必要があります。方法としては水の電気分解、メタノールの分解、石油の分解など、いろいろあります。しかし、このような分解には電力などのエネルギーが必要です。つまり、水素燃料電池を使うためには、他のエネルギーを使わなければならないのです。
- 【第2の問題点】:水素ガスが爆発性の気体であるということです。水素の怖さは周知の通りで、このようなものを自動車に積んで街中を走らせて大丈夫か、という懸念の声もあります。さらに、水素ガスステーションをどうするかといったインフラを含んだ問題があります。
水素燃料電池の課題
水素燃料電池には触媒が不可欠、現在のところ有力な触媒は「白金」です。白金はいうまでもなく貴重な貴金属であり、その産出はもっぱら南アフリカに頼るしかないのです。
価格は高く、その上、乱高下しやすい性質があるとのことです。もし水素燃料電池が多用される日がきたら、投機筋の思惑がからんで価格がどのように高騰するかは誰にも予測がつかないのです。
最後に
太陽電池や水素燃料電池といった次世代エネルギー技術は、近年ますます注目を集めています。しかし、それらの普及を妨げる課題も依然として山積み、インフラの整備不足、製造・運用コストの高さといった現実的な問題は、科学技術の進歩だけでなく、政治や経済の意思決定に深く関わっています。
それでもなお、地球環境問題の解決という大きな目標に向けて、この課題に立ち向かうための選択肢を考えることが、未来への責任と言えるでしょう。